・しおんの王は将棋アニメなのかサスペンスなのか赤飯アニメなのか
はっきりしろ(笑)
・鼻息荒く感想を書いてはみたものの、ちょっとでも読んでみたくなるような
感想文にはならなかったというしょんぼり具合。時砂の感想は難しかった。
読んだ人の数だけ感想はあるもので、自分と隔たりまくった感想を読むたびに
自信がなくなってくる。人は人、自分は自分ってのはもちろんなんだけど。
それでも好きだって言ってしまうのだけどね。
時砂の王感想
最初に言っておく。
ハヤカワJA文庫から出る小川一水の
本にはずれがない。
読み始めたら止まらなくなって一気読み。時間遡行物にある切なさ炸裂の
うえギリギリ瀬戸際の末期戦燃えに「導きの星」にある血脈的熱さが加わり
しんぼうたまらん!
時間系SFは危険が多すぎると思ったもんだけど(タイムパラドックスとか
計算があわないとかで読者が揉める)、SF初心者の私が読んだかぎりでは
難しい時間遡行理論は出てこなかったし、展開も納得のいくものでした。
時間枝というとらえ方を導入しているから、改変された歴史によって分岐点が
増えるという感じなんだよね。えー……これであってるか? まずい、ちょっと
自信ない。そのへんよくわからないで読んでるから、もしかするとアウトが
潜んでいるのかもしれない。
26世紀に人類生存を優先事項と受けつけられた人型人工知性体として
生を受けたオーヴィル(メッセンジャー・O)と仲間たちが、人類の殲滅を狙う
謎の機械生命体(ET)と絶望的な戦いを繰り広げるってのがあらすじではある。
あるが、読み終わってみるとこのあらすじではちょっと足りないような気が
してくる。バトル物ってんじゃないんだよな。戦闘シーンは山ほどあるけれど、
なんかもっとこう、なんだろ、無力感がある。
時間をさかのぼり、その時代の人類へETへの備えを促し戦いをサポート
するわけだけど、敵はあまりにも強大で(敵も時間遡行します)そのくせ
人類はまとまりきらずに滅亡を避けられないわけだ。この時代でも食い止め
られないとなったらより昔へとさかのぼることになる。それはその時代を
生きている人類、そこに連なる歴史そのものを見捨てることになるわけで。
時には人を動かすために策略まで用いて嘘をつき利用し、見捨て、
何千何億もの救えない命を築き上げながらの撤退戦ですよ。
その歴史における人類に介入してしまうゆえに、手のひらの指の間から
なにかがこぼれ落ちていく感じが強いんだよね。上手くすくいあげられない。
そしていくら戦い続けても、自分たちが生まれた時間には戻れない。
時間軍のメンバーは人工生命体ではあるけれど、出軍までの間に
色々な思い出をつくってきているわけです。けれどもその時間には絶対に
戻れないんですよ。離別はすべて永遠の別れだ。
それが何百回と繰り返され戦うことの意味さえ希薄になっていくわけです。
目次のステージ数の意味がわかったときはぞっとしたよ。
オーヴィルはどんどん摩耗していくんだよなぁ。あれだ、Fateのアーチャー
みたいなかんじかな。オーヴィルはグレようにもグレらんなかったんだけどな(笑)
そして戦略拮抗点にあたったのがAD248。Oは時の権力者卑弥呼と
ともに戦線をはることになる。この卑弥呼=彌与がまた熱い女でな。
ラストの彼女の咆吼が最高です。燃える、むっちゃ燃える。読んでる私の
心も吠えた。
というか「また」ですよ「また」
「復活の地」のときのような自転車で全力疾走するようなキャラやカプ萌え
はなくともまんまとやられたよ。十万年と二千年前から愛してるって時をかけて
人類の歴史という大樹をおはようからお休みまで見守ります。いやお休み
しちゃなんねぇので戦っているわけですがあーもー! もー!
難点をいうとしたらヒロインとの交流あたりか。これはどうなんだ。
ラブロマンスはありってことなの? なんか一方からの描写がほとんどで、
ロマンスというよりも傷つき疲れた男を癒した女ってかんじだ。
2度目を読んだらここいらはわざと書いてないんじゃないかという気が
してきましたよ。AD248においては彌与視点からしか語られないという
のもあるけど、どちらも運命の女なんだろうしな。
タイトルを「じさのおう」と読んでいましたが、表紙に「ときすなのおう」と
書いてあり間違いに気がついた。そうか、ときすなと訓読みなのか。
それにしても表紙のOはどこのキャスト(PSU)かと思うな(笑)
ハヤカワJA文庫から出る小川一水本はほんとはずれがない。
編集の腕がいいのか書きたいもの書けるものとの相性がいいのか……
コンパクトにまとまって1巻読み切り276ページ。小川初体験としても
お勧めしたいこの1冊。読んどけまじで。面白かった。
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