風色サーフ感想文
私は熱心に乙女ゲーを遊ぶユーザーではないので、私の知らない素敵な
乙女ゲが他にもあるのだと思う。
そう思うけれども、私にとって風色サーフは一番好きな乙女ゲーになりました。
簡単なあらすじは以下のとおり。
新大陸の空へ、有人飛行機が飛び立った。
―それは、人類が翼を手に入れた瞬間だった。
だが、ヨーロッパ大陸内で対立の一途をたどる国家間の現状に、
飛行機は『兵器』としての価値を見いだされてしまう。
1914年に始まった大陸大戦。
世界に大きな傷を残して停戦となった後も、大陸は多くの国々が
互いに睨み合う小康状態にあった。
そして、成歴1923年。
大陸内の一国、ユクトランド王国の王都で自動車整備工として
働く主人公一家。
老いてはいるが、『整備の神』とも言われる腕前を持つ父アントニー。
父手ずからの指導を受けた主人公エリカも、弱冠17歳にして優秀な
整備士へと成長していた。
ある日、ユクトランド王国軍から要請が来る。
アントニーに、戦後設立された陸軍航空小隊の整備兵になれと言うのだ。
年老いた父に無理をさせたくない、と、主人公は
「父の代わりに自分が行く」と言い出す。
派遣されたのは、隣国シュレスベルク帝国との国境近く、
ロランドの街にある基地。
最新鋭の飛行機を有する独立航空小隊、通称『ロビュ小隊』だった。
やってきた主人公に対し、ある者は『女』と侮り、ある者は妙な期待を寄せ、
ある者は『子供』であることに落胆する……。
誰1人として自分を『一人前の整備士』として扱わない事実を前に、
主人公は毅然と口を開く。
「私は整備兵としてここに来たんです。だから、早く仕事をさせてください」
まぁあれですよ、「紅の豚」のフィオになって多彩なキャラと一悶着という話。
レシプロ機でのドックファイトが空での戦い時代と思ってください。
設定がツボに入ったという、気に入るにあたり大きなアドバンテージがあった
というのはある。
昔からこういうのがあったらいいなと想像していた内容そのままの設定。
「紅の豚」を見たときに魂を撃ち抜かれた私にとって、風色の設定はどツボの
上をいく満塁ホームランでした。
ただまぁ乙女ゲーなんだよなこれ、という不安はあった。
乙女を馬鹿にしているわけではないけれど、私は今まで物語として
面白かった乙女ゲームに当たったことがないのです。
シチュエーションやら砂糖菓子みたいに甘いセリフによる瞬間的な萌え、
ギャグ的面白さはあっても、ただそれだけだったからなぁ。キラキラした
男性キャラとの恋愛至上主義というか。
それが悪いわけではないけれど、不幸にも遊んだタイトルがみんなそんな
傾向で物足りなかったんですよ。そんなこともあって、おそらく風色サーフも
そうなんだろうなぁと覚悟して購入しました。
重ねて申し上げますが、既存の乙女ゲーを軽んじているわけでもないし、
それを心底楽しんだ方を馬鹿にしているわけでもありません。
実際に遊んでみると作中世界に引き込まれ、普通に物語を読んでいました。
シチュやセリフではなく、言動でもってかっこいいキャラたちがそこにはいた。
どのルートも主人公を含めキャラたちが本当にかっこいい。一丸となって
困難を乗り切ろうとするチームワークと、確固たる決意があって燃える。
そう燃える。
風色サーフは燃えゲーなんですよ。
話の構成が共通ルート後3分岐し、そののち個別ルートに入る作り。
この中盤3分岐が面白い。どの分岐ルートになるのかはキャラによって固定
なものの、これからプレイする方にはぜひともネタバレなしで開始して
いただきたい。
個別ルートに入ってからは、各キャラ起こるイベントも置かれる立場も違うこと
もあり、アプローチ方法が違います。キャラによってセリフが違うだけの同じ話に
みえません。
物語の中の言動でもってにやにやできたりときめいたりできますので、
糖度が足りないということはなかったです。
幸せな結末の中に一抹の寂しさがあったりと、完全無欠ハッピーエンドだけで
ないのも好きなところ。
オッサンキャラが好きな方にはお薦め。
くたびれたおっさん(38)に厳しくも優しいおっさん(48)とガチなエンドを迎え
られます。脇を固める親方なおっさんとかセクハラなおっさんもお薦めです。
若いキャラもいいけどおっさんも光ってますよゲー。
もちろん良いところばかりではなく。
架空戦記の軍属もので地方小隊が舞台で、所属小隊の空気を”軍隊にしては
フランクで変わった小隊”という設定にしているものの、なんちゃって軍隊臭はある。
個人的にはもっと硬いほうが好みではあるな。
それでも完全ぬる燗軍隊ではない描写にはなっているかと。
ちゃんとキャラを殺しにくるのはグッジョブでした。
空戦も書いてますと謳っているものの、かなりあっさり目で個人的には
とても残念でした。パイロットと飛行機の最高の見せ場ですし、ここでぐぐっと
盛り上がりたかったのですよ。
「~だったらなぁ」と思うところのだいたいは、「乙女ゲーだからな」
という一言の前に散ってしまう。
ここを抜けることができたら乙女(女性向)ゲの幅も広がりそうなんだが。
流血はいや、バッド怖くて見られないという方はフルコンプは難しい作りです。
そんな流血絵がみんなえっれえかっこいいんですがね!
風色サーフはキャラクターデザインと実際のイベントCG作画担当者は別で、
しかも複数原画体制なのでイベント絵に若干のばらつきがあります。
キャラデの方が作画監督はしているので修正は入っているのでしょうが、
塗りも含めて違いはありますね。
私はキャラデ=原画担当だとばかり思い込んでいたので、エンディングの
スタッフロールを見て驚きました。公式サイトでは原画も担当していると記載
されているのですが、スタッフロールでは作監クレジットなんだよなぁ。
かっこいい空がなかったのが残念です。航空ものは空が綺麗だといいなぁと。
水上機は3Dムービーがあるんですが、これもがんばってほしかったな。
かっこよくオオルリが飛んでいる姿を見たかったのですよ。
音楽はアレンジ使用が多いです。1曲だけでいいので、作中にこれだという
曲が欲しくはあるな。
OPED曲はプレイ終了に真価を発揮。ムービーのデキもいいわけではないので
初見の印象はさほどでもなかったのですが、1ルート終わったあとにヘッドフォンで
聞いてみると脳内にキャラやオオルリが浮かんでくる仕様です。
エンディングムービーは最終キャラのみ再生したほうが大吉。
ルート見てないキャラのイベントCGも流れるので色々ネタバレします。とっほー。
システム周りはCG閲覧、シーン回想、バックログ閲覧&音声再生と、
必要なものは一通りそろっています。
ただセーブ&ロード、バックログ閲覧はもっさりしていて快適とは言い難いところ。
クイックセーブ&ロードがあるので救われた。スキップ機能もけっして早くはない
ですね。
音声はちょっと籠もってます。
これは環境に依存する部分もあるかと思うのですが、私の環境だと籠もって
聞こえるのでイヤホンorヘッドフォンでやりました。そうすると籠もりも気に
なりません。
風色サーフ(通常版) ラッセル 2009-05-28 by G-Tools |
残念部分はあるもののお気に入り。
ほんとに面白かったー!!!
以下ネタバレを含むキャラ別雑感のため隠します。